おっさんが舞う
電車の中でおっさんが舞う。
またしても電車での話である。
とある日の帰宅途中、電車にのっていた。
電車はとあるハブ駅についた。そこから乗り込んで来たおっさんは、乗降で入り乱れる乗客をかきわけて、空いていた座席のわずかな隙間に「わずかに」舞うようにしてダイブした。そこに座ろうと腰をおろしかけた乗客はあまりの剣幕にさっと身を避けた。
このようにして、そのおっさんは貴重な座席をゲットした。ふと思いだしたのは、子どもの頃に遊んだ席取りゲームである。ケツが椅子についてなければまだ君の椅子ではないでしょ?という剣幕で、座ろうとした(ほぼ座っていた)痩せ気味のA君を押しのけて(ふっ飛ばして)、強引に椅子を取ったやや豊満なB君のことを、ふと思いだした。
そしてわずかに舞ったおっさんは、そのような苦労をして座席を確保したにもかかわらず、次の駅で、たった一駅で、涼しい顔で降車したのであった。まったくもって面白いおっさんである。